2005 年後半の課題=ソープランドの営業をビジネスとして考える
次に、このかんのわれわれの問題意識の核心である「ビジネスとしてのソープランド論」に関して整理し、 2005 年後半に向けた営業方針の柱としたい。
 
■その前提となること
昨年 12 月の「 R-Group の現段階」において明らかにしたかったのは、まずもってわれわれの進むべき総路線ともいうべきものであった。われわれが歩いてきた道を、今一度総括し、正しいものは正しいものとして、誤りは誤りとして、また失策は失策として正しく総括し、今後われわれの進むべき大道を明らかにしたかったのである。
われわれは今、新しい体制の下、旧態依然とした昔ながらのソープランドの在り方から脱却し、会社=店=われわれスタッフ自身が全体として成長する道を模索している。
会社は、名義問題の解決にはじまり、人的にも経理的にも徐々に整備され文字通りの「会社組織」にむかってその階梯を歩み始めている。人的には、われわれ自身が「古色蒼然としたソープランドのボーイ」ではなく、グループの事業を理解しその事業の前進のために力を尽くすスタッフとして、ひとり一人がその努力を開始し、会社側もまた報酬その他においてその努力に応えようとしている。
そうした、会社とスタッフによる事業の前進と成長をかちとっていく上で、鍵となるのは「ビジネス」という考え方ではないかと、われわれは今考えている。われわれを取り巻く仕事のいっさいを、この「ビジネス」というフィルターをとおしてとらえることで考え方に一貫性を持たせ、また仕事上のすべての事柄に関する判断の基準を得ることができるのではないかと考えている。
もちろん、いうところの「ビジネス」とは、血の通わない冷徹な利益至上主義という意味合いでいうのではない。たしかに一般的にはそのような使われ方もする。
辞書によれば
 ビジネス 1 [business]
(1) 仕事。事業。商売。
(2) 特に、個人的な感情をまじえない、金もうけの手段としての仕事。
 「あくまで―としてわりきる」
とあり、やはり言葉としてネガティブな印象をもつ。
しかし、英語で「 business 」と言った場合には「事務 ; 業務 ; 職業 ; 実業 , 営業 , 商業 , 商売 ; 会社 , 店 ; 仕事 ; 用事 , 用件 ; 議事(日程) ; 本分 ; 関与 ; 事件 ; (劇の)しぐさ ( action )」などの多様な意味があり、また
mean business  本気である
go into business  事業を起こす , 実業界に入る .
get down to business  本気で仕事にかかる .
go about one's business  自分のすべき事をする .
などのように、きわめてポジティブな意味合いをもつ。
われわれは、「ビジネス」という言葉=考え方をこのように幅広くかつ多様な意味においてとらえ、仕事上のいっさいを文字通りビジネスティックに考えるということを習慣にしたいと思う。
実際、われわれスタッフの日常業務のいっさいは「ビジネス」=仕事であり、われわれを結ぶ絆のいっさいを規定するものは「ビジネス」=仕事である。われわれは仕事を通じて結び合い、仕事を通じて信頼を深め、仕事を通じて成長していく。
したがって当然のことながら、この「仕事」=「ビジネス」というものに関してわれわれなりの理解を深め、またその具体的課題についてもきちんと整理していかなくてはならないのである。
 
■われわれの仕事を「ビジネス」というフィルターを通じて見ようとしたとき、大きくマーケティングとセールスに分けることが出来る。マーケティングは「商品を作り出すこと=需要を作り出すこと」であり、セールスは「商品を売ること=需要に応えること」である。
男子スタッフが抱える仕事は多岐にわたるが、このさい「男子スタッフの仕事はセールスである」と言い切ってしまおうと思う。あらゆる他の付随する仕事もセールスのために必要な諸作業と位置づけることが可能である。
 
われわれにとっての商品はいうまでもなく「ホステス」である。ホステスそのものが商品であり、ホステスが繰り出すサービスの一切が商品である。それら商品を売るにあたって、必要なこととは何か。
一般的なセールスの流れから考えるなら、まず、
@商品を仕入れ
Aその商品を宣伝し、顧客を集め
B電話でアポイントをとり、
Cお客様に商品説明をして購買意欲を高め、
D結果として、販売につなげて集金する。
E加えて購入したお客様へのアフターフォローをして「安定顧客化」する・・・
である。こうした、ごく一般的なセールスの流れは、当然にもわれわれの商売にも当てはまる。つまり、
@募集その他によってホステスを入店させ、
Aホステスの写真を撮って宣伝し、
B電話がなったら「いい子ですよ」と勧めて予約をとり、
C来店したらアルバムを見せて「決め」にかかり、
D入浴料その他を集金して、案内する。
E上がってきたら「聞き込み」=アフターフォローをして「会員」になってもらう・・・
流れは、まったく同じなのである。というより、それがセールスである以上、当然にも同じ流れをたどることになるわけである。
 
ここで大切なのは、その案内=上がりまでの流れを即自的なものとして「今までそうしてきたら」「どこでもそうしているから」と自然発生的にとらえるのか、対自的=目的意識的に「セールス」の流れとしてとらえるのかということである。それを「セールス」の流れとして意識的にとらえることができるなら、セールス論の立場から、その個別的な一つひとつの課題=段階をさらに深化させることができるのではないかということなのである。そして、まさにそこにこそわれわれが獲得しようとするポイントが存在しているのだといえる。
たとえば、われわれにとって今日的には常識となった地方求人誌や HP を通じた積極的なホステス募集のやり方も、日々の営業を「セールス」として理解しない以前の金津園では(札幌に別店舗をもつ以前のホワイトハウスを除いて)およそ考えられないことであった。現在のわれわれの地平からすれば信じがたいことであるが、かつてホステス募集といえば、多く、「漫遊記」を見て応募してくる他店からの移籍組をただのんびりと待っているだけという状態だった。つまり「商品の仕入れ」という課題が、まったくの偶然性にゆだねられていたわけである。(もしくは、せいぜいのところ事業主体者として極めて屈辱的な「ホスト回り」)
 
商品の宣伝については、どうか。
現在、金津園のほとんどの店舗がホームページをもつようになり、 HP を通じた宣伝を行なっている。しかし、 3 年前までは「宣伝」といえばどの店舗も「漫遊記」「ヘヴン」のみだったのであり、 HP を持つようになった現在も、写真の入れ替えや HP の更新などアクセス増大のための取り組みを意識的にやっている店舗はまだまだ少数派である。また、ネット上の宣伝に欠かせないメルマガに至っては、まったく数えるほどの店舗しか実践していない。つまり言うなれば「宣伝」というひとつの課題が「慣例にならって雑誌に写真を出す」程度のものとしてしか位置づけられておらず、「セールス上の必須課題」としては、まったく意識の俎上(そじょう)に上がっていないということなのである。
 
電話でのアポイントメント=予約に関しても然(しか)りである。
これは、今後のわれわれの課題でもあるが、電話対応はわれわれの商売にとってある種「命綱」のようなものであって、一本の電話をいかに大切にできるかが予約獲得の要といえるわけである。実際、お客様から「いろいろ電話してみて、一番対応のいい店に決めた」という声を常に聞く。客のふりをして電話してみればわかることであるが、電話対応に関しては本当にさまざまであって、よくこんな対応で商売が成り立っているものだと思わせる店も多い。一方、対応の良い店であっても、教育の結果というよりは、それなりにスキルのある人間がたまたまフロントに座っていた結果と思わせることが多い。つまり、「命綱」だと誰もが否定できない電話対応に関してさえ意識的な取り組みがあるわけではなく、自然発生的=無意識的、もしくは即自的な状態に屈服してしまっている。
 
商品説明=営業に関していうなら、一人ひとりのホステス=商品のセールスポイントをお客様の好みにあわせてキチンと言えるレベルを、どれだけの店舗=スタッフが実現しているだろうか。また、何をセールスポイントとするかに関して当該のホステスとのすり合わせをどれだけやれているだろうか。商品説明に必要な「カタログ」=アルバムの類がどれだけ豊富に用意されているだろうか。
 
一事が万事、こういう状態であって、乱暴な言い方をすれば、金津園は世間一般の「セールスの常識」から 10 年単位の遅れをとっているといってさえよい状態なのである。
こういう状態を 100 パーセント脱却するには、われわれの中に少なくとも世間一般で常識となっているレベル程度の「セールスの常識」が必要であり、また、みずからの仕事内容を「セールス」として理解する意識と努力が必要である。
自らの仕事はセールスであり、自分は「セールスマン」なのだということ。「風俗業をビジネスとして考える」といった場合の出発点は、そこにこそあるのだといえる。
 
■こうした観点から、次にわれわれ男子スタッフの仕事内容をビジネスあるいはセールス(マーケティング)というファクターを通じて考えなおしてみたい。
 
まず 商品の仕入れ であるが、当然のことながら、固定した仕入先があるわけではない。また、仕入れたいと思ったときにすぐに仕入れが可能なわけでもない。現在のところ、ほとんどすべての店舗が不確定要素の大きい、はっきりいえば「いつあるかわからない」面接に頼っているというのが現状である。
これでは不安極まりないといわなければならない。
したがって、まずもって安定した商品供給のルートを作り上げることが、商品不足に陥らない必勝の課題となる。われわれの場合、このルートを地方求人誌とリクルート HP に求めたわけである。
求人誌による地方求人は、もともと金津の移籍組に期待できないところから、広く全国に人材を募りたいという希望からはじめたことであったが、まったくの風俗素人を多数獲得できたことは、望外の成果であった。風俗経験のない応募者は、ある意味 R-Group の路線と考え方において基礎から教育することが可能であり、店のカラーを作り上げていくうえで、必要にして不可欠な素材である。また、他店舗との条件比較を常に考える人材とは違い、入店から卒業まで、一貫してわれわれと共に行動する人材は、文字通りわれわれの仲間であり、ある意味「同志」である。こうした素材をどれだけ持てるかが、店の実力そのものといってもよいのである。この点、地方から R-Group だけを頼って来る素材の獲得を目指したことは、単に獲得数だけでは計れない組織としての強みを、われわれにもたらしたといえる。
リクルート HP に関しても同様で、東海圏のみならず全国からの応募を考えたとき、絶対になくてはならないものである。また、その HP のボリュームが、そのままその会社=グループの大きさ=信頼度を測る指標となるのであって、ようするに同じリクルート HP でも「ショボい」ものでは逆効果となることもあるのだということは、よくよく自覚しておかなければならない。これは、求人誌に関しても同様である。デザインはそのまま体(たい)を表すのである。このことに関しては宣伝の項でもう一度触れる。
 
ところで、今、女性求人をめぐってひとつの「革命」が進行しつつある。すでに関東を中心にしていくつか見られる WEB 上の「スカウトサイト」がそれである。
これまで各個別的な女性が風俗店に応募する道筋は、それが求人誌を通じてであれ、 HP を通じてであれ、店舗への電話もしくはメールという直接的な応募というのが一般的であった。というより、それ以外のかたちはありえなかった。ところが、ここ数ヶ月の間にスカウトサイトなるものが WEB 上に出現し、これまで、言ってみれば「直接売買」であった風俗求人を「オークション」形式に変えてしまったのである。これは求人のあり方の根本的な変革といってよい。現段階ではそれほど大きな影響はないようにも見えるが、これは正直すさまじい変革であって、そのもたらす影響の大きさについて、しっかりと見据える必要がある。
いわゆるスカウトサイトにおいて、応募者は希望の店舗に直接応募するのではなく、まずスカウトサイトに自らの名前とプロフィール、可能ならば写真付きで登録する。その登録者に対して、ほしいと希望する各店舗側がスカウトメールを送って入札形式で応募者を獲得するのである。したがって、当然のことながら、もし「商品の仕入れ」という分野において、こうしたオークション形式が主流となった場合、いい素材であればあるだけ、各店舗の獲得合戦になる可能性があるということである。ということは、また給与その他の労働条件の緩和合戦になるとも予想される。
こうした WEB 上の人材オークションは、すでにいわゆる「 Yahoo !リクナビ」などにおいて先行的に取り入れられてきた手法であり、インターネットの発展とともに必然となった求人のやり方ではあるが、こうした手法は、それまで求人を真剣に考え求人誌その他の取り組みをしてきた店舗と、そのあたりをあまり考えてこなかった店舗の差を、スカウトサイトに求人登録することとスカウトメールを送るという、ただその一点において平準化するものであり、求人にかけるエネルギーとアイデアの今ひとつの飛躍をわれわれに迫るものである。
今後、最悪のパターンとして最も考えられるのは金津園ワールドが、この種の求人サイトをやり始める可能性があるということである。そうなった場合、スカウトメールにおける魅力ある内容の追求をはじめ、サイトそのものの大幅な拡充など、 WEB 戦略において金津園内他店舗の追随を文字通り許さないレベルを、現段階のうちから準備する必要がある。また、場合によっては、スカウトサイトそのものを自ら開設し、自家運営することも含め検討していかなければならない。
(スカウトサイトに関しかなり危機意識をもった書き方になったが、現状風俗界の応募にあって、スカウトサイトに登録している女性個人はごく少数であり、また、写真付きで自己宣伝するという行為のもつある種の「いやらしさ」からして、われわれの望む人材がそこにあるとはあまり考えていない。実際、登録者はかなり風俗ズレしていると思われるものが多い。しかし、インターネットの発展、もしくはインターネットを通じた情報流通の全社会化を展望したとき、近い将来、風俗においてもこうした求人のあり方が一般的となる可能性を否定できないのである。)
 
求人=ホステス供給に関しては、古典的なやり方もある。ホスト経由がそれである。
これまでホステス供給の手段として往々使われてきた「ホストとのからみ」に関してここではっきりと一つの方針を掲げておきたいと思う。もともと R-Group ではホストがらみの求人は避けてきた。実際にもそれでは良い商品が集まらないという現実があったからである。また、ホストに貢ぐことをソープで働く動機としている女性の場合、その末路があまりにも悲惨であり、その姿を見るに付け、われわれ自身が悲しくなってしまうからである。いうまでもなく、仕事と愛情は人間にとってもっとも大切な人生のテーマである。ホストは、この 2 つをカネでつなげることをその生業とする。したがって、ホストがらみで求人を求めることは、この人生の果実に対する根源的な裏切りなのだ。ホストに求人を期待するようでは、われわれは仕事に理想を語ることはできないということある。
 
さて、商品の仕入れは求人誌にせよ、 WEB にせよ、長期継続的な取り組みが必要であるとはいえる。決まった供給先がない以上、広く全国に応募を求める態度は今後も継続していく必要がある。効果的な求人は、応募者の立場で考えたとき、そのヒントはつかめるのではないかと思う。
・求人誌における魅力的な紙面
・ HP における膨大な情報量
・グループとしての明確な路線と方針、
・旗幟(きし)鮮明であること。
総じて、知名度と信頼度をアピールすること、等々である。
一方、地方求人といった場合の、人脈作りも今後重要な課題となる。もともと地方に人材を求めるといった場合、根本的には当該地方に十分な求人がないことを前提としているわけであり、またわれわれの仕事のもつ性格と応募に際して払拭しがたい不安感を解消するものは、やはり先人の「口コミ」であり、その口コミを組織するものは、なんといっても人脈なのである。京都に沖縄村ともいえる沖縄人脈を作った例もある。こうした例に学びつつ、太いパイプを作っていくことである。