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男子の接客・仕事全般について
R-GROUP事務局通達 2011.10.8

通達の第二回目。今回は男子の仕事そのものについてふり返ってみたい。


男子の仕事、とりわけ接客は、接客業に携わるわれわれにとって日常的に中心となる課題であり、仕事のすべてと言ってもいい。そこにこそ、接客人としての誇りをかけた自分自身の仕事内容を対象化すべきであり、またひとつひとつの接客場面、お客様との会話それ自身が自らを接客人として打ち鍛え成長させるべき鉄火場であると考えるべきである。

具体的な接客場面だけではない。お客様を前にした接客に至るすべての準備・下仕事がわれわれにとって欠くべからざる仕事そのものであり、その仕事をまさに仕事としてやり抜くことを通じてのみ、われわれは飛躍と成長をかちとることができる。

実際、仕事は人間を成長させるただ唯一の社会的経験である。人間は仕事のなかでしか成長することができない。泳ぎは水のなかでしか学ぶことができないように、社会的能力のすべては社会的経験のなかでしか身につけることができない。

もし仮に、日々の仕事のなかで苦闘することもなく、苦悩や悔しさや喜びを感じることもできず、自分自身の成長を自覚できないとするならば、それは実際「仕事をしていない」「仕事になっていない」のである。作業と仕事は違うとはよく言われることであるが、事実、仕事ではない「作業」を百万回重ねても人は変わるものではない。

「これは作業をしたのではない。まさに仕事をしたのだ!」と確信をもっていえる取り組みだけが、人をして覚醒させ、劇的な内的化学的変化をもたらすものだ。そういう意識と気概をもって働いた10年と、作業を積み重ねた10年、いずれの未来に光明があるかはおのずと明らかというべきだろう。

卑近な例をあげてみよう。
たとえば「おしぼり」。
洗濯機で洗い、脱水し、丸くたたみ(成形し)、キャビネットで加熱し、皿に入れて出す。作業だけのことをいえば、その繰り返しである。
しかし、その作業のなかでもいろいろな問題が起こる。臭いがする。水けが多い。汚れている・・等々。
行った先々の飲食店やホテルなどで出されるおしぼりが臭かったという経験はないだろうか。おしぼりそのものは臭くなくても、手を拭いたらその手が臭くなったという経験はないか。どんなに美味しいレストランでも、手を拭いたおしぼりが臭かったら全部が帳消しになってしまう。客は、そこにその店の接客レベルの低さ、仕事の底の浅さを見てしまうからだ。

じつは、おしぼりは、一連の作業のなかで「いったん乾燥させる」という行程を省略すると、常に湿った状態が続き、そのうち雑菌が繁殖して悪臭を放つことになる(貴公子の日報で報告されていた点である)。また、手や顔に付着している皮脂は水で洗っただけでは完全に落とすことはできない。皮脂だけではない。1日1層落屑するといわれる古い角質、皮脂腺から分泌される油脂・脂肪酸。汗腺分泌される無機塩類・乳酸・尿素、外から付着してくる灰分・塵芥・煤煙。ありとあらゆる汚れがおしぼりには付着するのであり、これらが不完全な洗濯によって繊維内に残留・蓄積することになる。
どうしたら清潔感のある柔らかいおしぼりを提供することができるか。洗濯の水温・時間、使用する洗剤の種類、交換の頻度・・・そこを真剣に考え実践するところから、初めて「作業」ではない「仕事」が始まるのだといえる。日本固有の文化である「おしぼり」に関して、そしてあらゆる接客仕事の入り口となる「おしぼり」に関して、自分はプロだといえる境地をつくることである。



たとえば、朝の準備
鍵を開ける、ボイラーをつける。電気をつける。個室にタオルを入れる。窓を閉める。エアコンを入れる。マットの空気を確認する。・・・
そうした一連の作業のなかにも、「仕事」はある。
かつて筆者が中級店にいたころ、先輩スタッフはタオルの束をポーンと部屋に投げ入れていくやり方をしていた。文字通り投げ入れるのである。放るといってもよい。タオルはベッドの上に投げられて乱雑なかたちでそこに置かれる。しかし、今にして思う。そんなタオル束を見てキャストはどう感じただろうか。

大タオルをきちんと置く。そのうえにタオルケットをきちんとたたみ直して置く。小タオルをきちんと置く。シーツを置く。置いたすべてのものに直角をつくる。角を合わせる。・・・
朝のタオル入れに始まる一連の作業は、「その日一日キャストさんが滞り無く、そして気持ちよく仕事ができるようにするためのもの」と位置づければ、準備の視野は大きく広がっていく。

たとえばマットに関してもキャストさんそれぞれの「好み」がある。ある人は空気がパンパンに入った状態のマットを好み、また別の人は多少空気の抜けた状態のマットが滑りやすいという。その日、その部屋を使うキャストさんが誰であるかがわかっていれば、そのキャストさんに合わせてマットの空気を調節することができる。

部屋によっては排水口の臭いが逆流してくる部屋がある。待機中、あるいは接客中でも、排水以外の時間に臭いが部屋にこもらないようにゴム製のフタを自作してセットしておく。

きちんと湯が出るかどうか、蛇口をひねってみる。湯の出方はどうか。温度調節はきちんとできるか。弁が甘くなってはいないか。シャワーの水流の強さは、接客に耐えうる状態か。あるいはマットのローションがきちんと洗い落とせる強さか。
金津園はすべて井戸水になっている関係で不純物が多く、蛇口に異物がたまって湯の出が悪くなることも多い。大丈夫か。・・

備品は揃っているか。普段あまり使わないクシやブラシの袋にホコリは溜まっていないか。石鹸はチビていないか。

エアコンはちゃんと作動するか。ドレーンは詰まっていないか。鏡はきちんと磨かれているか。待機室は掃除できているか。

男子スタッフが心で為した仕事は、必ずキャストの士気を高める。逆に男子の仕事に魂が入っていないと、キャストの仕事はおのずとおろそかになる。仕事の情熱は伝播するものである。

総じていわゆる下仕事、準備・後片付け・備品関連・清掃などはソープランドに限らず、あらゆる接客業において基本中の基本である。下仕事は消耗な仕事ではない。男子・女子ふくめ華やかな接客場面全体を根底において支えるものであり、店舗全体の接客の高さをその根本において規定するものである。
あえて言ってしまえば、接客業におけるスタッフの質は、下仕事にどれだけ真剣にに取り組めるかで決まる。口でモノを言うのではない。人の見ていないところで地味な作業をいかに情熱をもってやれるかである。伸びる人間は、お客様が汚した便器を素手で磨きながら、店とこの街の繁栄を人知れず念じているものだ。



駐車番
駐車番という言い方はじつは正しくない。お客様のクルマを預かり、送迎をし、駐車場の管理も行うが、本質的には店の玄関を預かる仕事である。正確な対比ではないが、ホテルでいうところのベルマン・ポーターのような存在といえばよい。通常、ソープランドに入店して最初に与えられる仕事である。

この仕事を何も考えないでやればこうなるだろう。
店の前に立つ。クルマが止まった。「ご予約ですか?」「お名前は?」「会員様ですか?」
お帰りですとコールがかかる。お客様が出てくる。「靴はこれですか?違いますか・・・ではこれですか?」

・・すでに作業ともいえないレベルだとは思うが、対比してわかることがある。それは、駐車番においてもっとも重要なことは、来店されるお客様の名前と車種と顔があらかじめアタマの中に入っているということである。帰りも同様、お帰りになるお客様の顔と名前と靴、車種あるいはお帰りの手段がすべてアタマの中に入っているということである。

かつて筆者が金津園で働き始めたころ、最初に与えられた仕事はやはり駐車番であった。総額38000円の中級店。12部屋6回転、平日の来店数は20人程度だが土日になると40人、多いときには50人を超えた。いわゆる外のフリー客もまだまだある時代だった。
駐車番、つまり来店と案内の架け橋となる作業・・・をやりながら常に心に置いていたのは、1度でもお会いしたことのあるお客様の名前を、あらためて尋ねずに済むようにするということだった。

「いらっしゃいませ!(あぁ先週も来てくれた方だ・・何というお名前だったか思い出せない・・・)すみません、お名前は?」

するとお客様はしらけた表情で私を見る。その顔はこう言っている。

「私を知らないのか? なんだ、来たばかりの新参者か。」
あるいは
「顔を覚えろよ。何回来てると思っているんだ。毎回言わさないでくれ。」

だから、1度でも会った方の名前は覚えて、再び聞かないようにする。

クルマが店の前に止まる。・・・その瞬間から駐車番の本当の意味での仕事が始まるのだと気構える。顧客情報、来店予定時間・お名前・車種・ご予約内容などは事前にしっかりアタマに叩きこんでおく。ご予約の方であれば

「いらっしゃいませ、○○様。お待ちしておりました」

確実にこちらからお名前を言う。あらためて名前を聞くことをしない。そして魔法の言葉を朗々と謳い上げる。
「メンバー○○様、ご来店です!」

ご予約なしでふと来店されたお客様でも、自分の中に蓄積したデータを瞬間的に引き出す。

「○○様!(ではありませんか!これはこれは・・といった口調)・・いつもありがとうございます」
「予約はしてないんだけど・・・」
「大丈夫です。お目当ての女の子はおられましたか・・・? さぁ、どうぞ!とりあえずご相談しましょう!メンバー○○様、ご来店です!」

常連のお客様が店に対して求めるステイタスの第一は、自分の存在がその店において確実に認知され尊重されるということである。流れ作業の荷物ように扱われるのではなく、唯一無二の存在として、認知・尊重・感謝をもって迎えられることである。

「いつもありがとうございます。」・・安っぽいことを言うようだが、この「いつも」という言葉が何にもまして重要だ。当該のお客様はこの「いつも」という言葉を聞いて、これまで自分がこの店を何度も利用し大枚をはたいたことを店側はわかっているのだなと感じて嬉しく思うものである。もっとはっきり言うなら、その店でカネを使ったことを「納得」するのである。一般的に会員と認識されるだけではなく、名前で呼ばれ個別的に認知され尊重されたなら、もう他所の店に行こうとは思わない。

ことほど左様に駐車番=ポーターの優秀さは(下仕事と同様)店全体の接客の高さをその根本において規定する。一流ホテルには、あるいは一流のクラブ(飲食店)でもそうだが、数千人の顧客の顔と名前、社名を頭脳に叩きこんだコンピューターのような優秀なポーター・ベルマン・受付が存在している。そのベルマンが自分を古い友人のようにいつも迎えてくれるからこそ、そのホテルを選ぶ、あるいはその店を利用する・・ということが実際多くあるのだ。
ゴールドカスタマーづくりは、まずは、こうしたポーター業務から始まると考えるべきである。駐車番を与えられるということは、店の顔を与えられるということなのであり、駐車番はその本質において花形なのである。



待合室での接客。あるいは上がり接客
さて、具体的な待合室・上がり部屋での接客である。

通常の作業としての流れをふり返ってみる。
【案内】
①お茶を出す「いらっしゃいませ。」
②指名を確認する「(アルバムを見せ)今日はこの子でよろしかったですか?」
③受付をする「コースはどうなさいますか?」「では○○円になります。」
④お釣りを渡す「○円のお返しになります。お手洗いは大丈夫ですか?」
⑤案内する「ご案内です。」「本日はご指名ご来店いただきありがとうございます。お時間参りますまで、ごゆっくりお入りくださいませ」
【上がり】
⑥上がりを受ける「お上がりなさいませ。」
⑦上がり茶を出す「ありがとうございました。」
⑧アンケートを出す「よろしければ、アンケートにご協力をお願いします。」
⑨聞き込みをする「今日のキャストはいかがでしたか?」
⑩お帰りを準備する 駐車番に連絡を入れる「○○様JRでお帰りです。」あるいは「おクルマ○○でお帰りです。」
⑪送り出す「○○様、お帰りの準備が整いました。どうぞ。」
一同唱和「ありがとうございました!」

こうした作業としての流れのなかにも、接客人としての仕事をする場面がたくさんある。
たとえば同じ本指名のお客様でも長年のリピーターである場合と、初めてのリターンである場合では、語りかける言葉も違ってくる。

初めてのリターンであれば熱い感謝の思いをこめて、つまり頑張ったキャストの仕事を評価しリターンをいただいたことに限りない感謝の気持ちをこめてお礼を述べるべきだろうし、長年のリピーターであれば、ご利用いただいたその年数・回数分の「いつも」を添えて頭を垂れるべきであろう。

本指名のお客様に無用な聞き込みをしない、他のお客様がたくさん見える場面でキャスト名を出さない、待合室で大きな声でお客様の名前を呼ばないなどの気遣いは、誰もが気づけることであるし、わかることである。
上がってきたときの表情から、最初に語りかける言葉が変わってくることも理解できよう。満足できたのか、イマイチだったのか、表情から読み取れる情報をもとに、最初の一言も決まってくる。

喫煙席と禁煙席を分けてくれという指摘を村田様はじめよく頂いているが、店のキャパシティの限界でそれができないにしても、その回の来店顧客の状況から少なくとも喫煙者の隣に座らせないなどの気遣いは、そこにいるスタッフが現場で考えてできることである。「村田様、すみません、こんな席しかご用意できないのですが、こちらのほうが少しマシだと思います。こちらへどうぞ」の言葉を添えて。
その思いがなければ、ヘビースモーカーのとなりに非喫煙のお客様を座らせる愚をおかすことにもなりかねない。

聞き込みに関しても、ただ無内容にあるいは何の事前準備もなく「いかがでしたか?」と聞くのと、当該顧客の履歴をアタマに入れ好みの傾向を把握したうえで聞き込みに入るのでは、引き出す感想も違ってくる。顧客一般の気持ちからすると、自分の好みや傾向、あるいは自分がこれまで店で使ったカネの総額をわかっていないような人間がトンチンカンなことを聞いてきても、まともに答えようなどとは思わないものである。しかし、

「前に入っていただいたキャスト○○に関しては-------という感想をいただいていましたね。今回のキャストはその逆のタイプの女の子ですので、その点いかがだったか、ぜひお話をお伺いしたいと思いまして・・」

と言えば、顧客は「ああ、形式的にではなく、本当に顧客の感想を求めているのだな」と感じるであろう。

聞き込みに関する基本的スタンスとして、自信満々で聞いてはならないということがある。
実績あるキャストで間違いなく高評価に違いないとは思っていても、実際好みの問題もあるし、最高の顧客満足度を追求するという立場から言っても、本当にご満足いただけたのかどうかを、控えめに(演出としては心配そうな表情で)聞いたほうがよい。
というのも、聞き込みにおいて、店の人間がキャストのじっさいの仕事内容も十分に把握することもなく、自信満々で「どうだ、よかっただろう」と言わんばかりの顔を向けてくることほど、不愉快なことはないからだ。

筆者は、雄琴のフォーナインで実際に「どうですか? よかったでしょう。」と、言葉そのままに言われたことがある。よかったでしょうというような内容のことを言われたのではない。「どうですか、よかったでしょう。」と言われたのだ。そのスタッフはソファーに座っている私の1メートル横に立ち、立ったまま腰を少し折り、私を見下ろしてそう言った。立ったまま見下ろして・・・である。
上から目線という言葉があるが、まさに私の視線の上から、「上から目線」のことを言ってみせたわけだ。接客の世界において、こういう御仁は銃殺ものだと私は思っている※。
※「お客様の目線の下に入る」。これは接客界において憲法第一条であると思ってほしい。

お帰りのタイミング。「まだアイスを食べている途中だった」という指摘をよく受ける。入れ替えと座席のキャパシティから致し方なくそうなるのかも知れないが、少なくとも苦情になるようなことは避けなければ、キャストの仕事も帳消しになってしまいかねない。
お帰りのタイミングをはかるというのは、じつは最も難しい仕事である。早過ぎれば苦情になり、遅すぎれば気が利かないと言われる。上がり接客の流れのなかでそのタイミングをつかむのが最善ではあるが、もし回転上可能であれば、ひと通り上がり接客を行ったうえで、こんな方法もある。

「どうぞ、アルバムをご覧になってごゆっくりなさってください。お帰りの準備だけはしておきます。お帰りの際にはお声をおかけください。」

ほったらかされたわけでもなく、かと言って執拗に聞き込みをされて長居させられたわけでもない。適度な距離感でお帰りいただけるのではないかと思う。

聞き込みをする、あるいは、あえて聞き込みをしない。そっとお帰りいただく。・・・そうした空気を読むことも、場面によっては重要な仕事になることも、付言しておきたい。

※聞き込みと接客については他にもたくさんあるが、「路線的な取り組みの概況とわれわれの決意2008.4」のなかで大筋は述べたので、あとはそちらを参照してほしい。



フロント業務
フロント業務は多岐に渡るが、今回は電話応対に関してのみ述べたいと思う。

言うまでもなく電話応対の爽やかさ・明るさ、総じて「感じの良さ」は店舗選択の決定的な指標となるものであって、ここにこそ集客の生命線があるといってよい。
電話応対に関してはこれまでもその重要性について折に触れて述べてきたとは思うが、ソープランドのフロントが考えるべき大切なことはだいたい以下のようなところではないかと考えている。

①なにもスマートである必要はない。たどたどしい、あるいは田舎くさい対応でもいい。心のこもった応対を心がけること。
②何よりも感謝の気持ちが伝わる電話応対にしよう。電話を頂いてありがたいという気持ちを表現することが大切である。
③顧客の要望に関しては、出来る限り応えようとする姿勢をもつ。

よく言われることだが、相手の顔が見えないやりとりだからこそ、気持ちを伝えようとする点において注意が必要である。そうした電話応対の基本的なマニュアルや心構えに関しては、たくさんの本が売られており、またWEB上にも多くの資料が出ている。それを読むと「姿勢に気をつけろ」とか「発音をはっきりと」とか、いろいろ書いてある。そうしたことは、社会人の一般常識として各自が勉強して主体的に身につけていけばよい。ここではあえて、そうした社会人の基礎教育のようなことは言わない。

本稿ではソープランドのフロントが気をつけるべき決定的な問題について2つだけ書いておく。これは通達であり、方針である。絶対に貫徹してもらいたい

【方針その①】1回の電話で「ありがとう」を5回言え
少し、苦言を呈することを許していただきたい。
今、R-GROUPの電話応対を聞いているとたしかに丁寧である。丁寧ではあるが、「ありがとう」の言葉が少なすぎる。
これはサービス業の電話応対としては決定的なことであり、はっきりいえば致命的なことであると考えている。「そんな言い方をしていたら顧客が逃げるではないか」とハラハラしてしまうような場面も多い。
正直に言わせていただくと、私はこの点に関して、かなりの危惧を抱いている。

また昔話をしてしまうことになるが、かつてR-GROUPにもお客様が少なく暇で、電話が鳴らない時代があった。電話が鳴らないということは来店予定がないということである。それは、1時間に1本も鳴らないというほどひどいものであった。このまま電話が鳴らなければ店は潰れてしまう。そんな思いに震えていた時代だった。

そんな時代、当然のことながら「電話を鳴らすにはどうしたいいだろうか・・・?」ということが毎日の課題であった。系列店も同様であった。
ある時、系列の店長から店に電話がかかってくる。
「もしもし・・・電話、鳴らしてみました。」
「あ、あぁ、ありがとうございます・・・」
お客様からの電話が鳴らない電話機を(お客様じゃないけど私が)鳴らしてみましたよ・・という愚にもつかない悪ふざけである。今では冗談としか聞こえないが、要するにそんな時代もあったということだ。

1本の電話を渇望している。そんな時代を生きてきた身からすると、電話が鳴ることは本当に有り難いことであり、電話が鳴った瞬間「金津46店舗中よくぞ私の店にかけていただいた!」という思いでいっぱいになるというのが当たり前の感覚である。

有り難い・・・。その思いが、1回の電話で5回も6回も「ありがとう」の言葉を言わせる。

今、R-GROUPは忙しくなった。電話もたくさん鳴る。しかし、1本の電話を渇望していた時代から、お客様への感謝の気持ちは、その本質において何も変らないはずだ。

1回の電話で「ありがとう」を5回言う。
「お電話いただきありがとうございます。」
「予約したいんだけど」
「(ご予約の意思をあらわしていただき)ありがとうございます。」
「○○さんですけど、明日の4時空いてますか?」
「○○ですね、(ご指名をいただき)ありがとうございます。・・」
「どんな子なんですか?」
「(キャストに興味をもっていただき)ありがとうございます。とても性格のやさしい子で評価の高い子ですよ。・・・」
「1時間前に確認電話すればいいんですね。」
「(システムをご理解いただき)ありがとうございます。・・・」
最後は、お電話・ご予約・ご指名いただいて
ありがとうございました。」

これで「ありがとう」が6回である。何も不自然な数ではない。
忙しいなかお電話をいただいたこと、私どもの店やキャストに興味をもっていただいたこと、具体的にご予約をいただいたこと、・・そのすべてに有り難いという気持ちを持とうということである。あるいは持って当然ということである。逆に、もし持たないとしたら、それはすでに接客人の感覚ではなくなっているのではないかということでもある。

低姿勢で営業していたラーメン屋が行列ができるようになったとたん、横柄な態度に変わることがある。今まで「食べていただいてありがとう」だった店が「食べさせてやるよ」に変わる。仕事慣れしてある程度仕事がわかってくると、これまで「雇っていただいてありがとう」だった社員が、「働いてやっている」に変わる。
人間の悲しい性かも知れないが、そんな愚をわれわれが繰り返すわけにはいかないのである。1回の電話で「ありがとう」を5回言う。暇な時代を知らない諸君、新しく入店した諸君も含めて「接客人の原点」に立ち返って絶対貫徹をお願いしたい。

 

【方針その②】電話は1コールでとれ
電話に関してもうひとつ苦言を呈したい。それは、電話に出るのが総じて遅いということである。

ひと昔前のビジネスの常識に「電話は2コールで出よ」というのがあった。1コールでは性急に過ぎる。3コールでは待たせすぎ。2コールで出るのが理想的という考え方だ。

今やこれはかなり時代遅れになっていると思われる。スピーディーが当たり前の時代にあって、2コール原則はそぐわない。1コールで十分である。現在では「電話は1コールで取れ」と指導している業界が多い。着信表示があったら1コールも待たずに受けるという業界すらある。

ここで方針をはっきりさせておこう。電話は1コールで取る。それでよい。

問題は1コールでとれなかった場合の応対の仕方である。
2コールで取れたならとくに問題はない。問題は3コールも含め、それ以上コールさせてしまったときの応対である。一般的な電話応対セミナーでは次のようによく言われる。

心理学的に、人は10秒以上待つと苛立ちを覚えると言われています。
1コールは約3秒、2コールで約6秒。一般的には、2コール聞き終わった後が良いタイミングだと言われております。3コール以上(約9秒以上)で取った場合は「お待たせいたしました」の言葉を添えること。

当たり前のことである。ところが、現在R-GROUP各店舗の電話応対を聞いていると、3コール以上鳴らしてしまっても、「お待たせしました」の言葉を添える応対が少ない。はっきり言ってほとんどそういう言葉を聞かない。これは社会一般常識に照らしても、非常に奇異なことである。電話応対のスタンダードが著しく後退していると思わざるをえない。はっきり言えば、間違いなく顧客に悪印象を与えている。じつに空恐ろしいことである。

ここで考えてもらいたいのは、各店舗で採用されている着信したときの呼び出しメロディーの採用についてである。お客様から着信のあったときにメロディーが鳴る。今、家庭用電話機にはデフォルトでそういう設定になっているものが多いのだとは思うが、趣味の世界においてはともかく、私はビジネスにおいてこういう設定は百害あって一利なしだと考えている。最大の問題は、呼び出し音がメロディーだと、何コール鳴っているのかがわからないということである。これは決定的ではないか。

電話は1コールでとれとか、3コール以上鳴ったら「お待たせしました」の言葉を添えよ・・などと言ったところで、呼び出しがメロディー音になっていたとしたら、それが貫徹できるわけもない。

a. 電話の呼び出し音にメロディーを使用することはやめる。オーソドックスなコール音とする。
b. 電話は1コールでとる。
c. 3コール鳴ってしまった場合は、必ず「待たせて申し訳ない」という思いを込めて「お待たせしました!」の言葉から始める。
d. 一回の電話で「ありがとう」を5回言う。

電話を頂いたことに対し、限りない感謝の気持ちをこめて対応することは、言うを待たない。
以上を今日から電話応対の基本方針としよう。

 

男子の仕事論、接客および仕事全体についてはまだまだ課題山積ではあるが、次回にまわすこととして、とりあえず今日は以上を確認としたい。

「お客様に喜んでもらいたい」という接客人の魂に導かれた無心な取り組みは、顧客をして他店とは違うホスピタリティを感じさせる。その向こう側に接客人の勲章であるゴールドカスタマーが控えているのだということに徹底的な確信をもって日々の仕事を貫徹していこう。

 

なお、現状男子の数が少なく、1店舗あたりの配属数が最低ラインとなっていることもあって非常に大変な状況ではある。
しかし、逆にそういう状況においてこそ仕事人・会社人としての気概と力量が問われているのだと捉え返すことが必要ではないだろうか。任務が多忙であることをネガティブな被害感でとらえるのではなく、仕事人としての矜持にかけても全面的に受けてたち、誇り高くやりぬくことこそが求められているのだと考える。事実、会社が真に求めているのは、まさにそういう人材である。

社員諸兄の奮起奮闘、獅子奮迅の活躍を期待したい。

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