課題と方針は多岐に渡るが、ここでは大きく
■キャストの出勤と部屋の最大稼働について
■男子の接客
■WEBをめぐる顧客争奪戦
の3点に重点をおいて考えてみたいと思う。今日はその第一回目。
※これまでの総括文書においては、事務局の立場と日常的な任務に規定されて、キャスト求人とその膨大な補充を通じた集客=売上づくり・・といった視点を中心にして述べるかたちが多かったが、本稿ではわれわれの中心的=日常的課題ともいえる接客現場とフロント業務の問題を多く取り上げてみたいと考える。われわれにとって、それこそが「本来の仕事」であるといえるからである。
■キャストの出勤と部屋の最大稼働について
そもそもの根本的な、われわれの日常的な仕事の課題は、部屋数に規定された最大可能接客数をいかにして日々実現していくかという点にある。
10部屋ある店舗であれば、毎日かならず10人のキャストを出勤させ、そのすべてのキャストに最大稼働数の顧客をつけること。4店舗すべてをあわせると、われわれには
ラブティファニー10
ルネッサンス8
クラブロイヤル7
リージェントクラブ貴公子11
で合計36の部屋が存在しているわけであるが、4店舗協力してそのすべてを埋める36人のキャストを出勤させ、同時にそのすべてを取りこぼしなく稼働させることである。
ここにこそわれわれの日常的な総括基軸があり、そこにむかってすべての取り組みが存在しているのだといえる。
そうした視点からするならば、たとえば出勤人数の少ない日に、「今日は3人しか出勤しなかったが明日は10人出るからいいか・・」という考え方がおよそ成り立たつものでないことは容易に理解されるだろう。
たとえば8部屋5回転の店舗で3人しか出勤しなかったとするならば、空いた5部屋×5回転=25回転分の売上が機会ロスとなる。もし1本単価25,000円であれば625,000円がロスである。もしそんな日が月に10日もあれば月間600万以上、年間にして7200万以上のカネをロスすることになる。
ロスとは、「本来、売り上げることができたはずのカネ」である。そしてそのカネは、その時に売り上げなければ、未来永劫取り返すことのできないものである。だから、われわれにとって日々の営業とは、言わばこの「機会ロス」との闘いなのだともいえる。
そうした観点から日々のフロント業務をふり返ってみると、出勤確保のためのキャスト指導がいかに大切かということがわかる。現状、1ヶ月の出勤マップをつくり、そのすべてを埋める熱情をもってキャストへの出勤指導がなされているだろうか。あるいは、キャストが出してきた出勤表をそれぞれあるがままに認め、そのモザイク的調整として月の出勤マップが作成されているということはないか。もしそうであるとしたら、R-GROUPの出勤マップは、そこにフロントの意思が反映しない、キャストまかせの最少出勤マップということになる。
もちろん、募集要項において出勤は希望通りを基本とすると打ち出してはいる。しかしだからと言って、店舗利害と無関係に出勤を考えていいとは言っていない。店舗利害が貫徹されてはじめてキャストの「自由な出勤スケジュール」があるのであって、それは店舗を構えて商売をしている以上、至極当然のことである。たとえば、キャストの「自由な出勤スケジュール」通りにマップをつくったとして、土日が20人出勤で月曜日が2人だった・・・というような出勤マップはありえないということである。
部屋数に規定された最大可能接客数を最大限追求するというフロントサイドの意思が、出勤マップ作成において徹底的に貫徹されなければならないということだ。
※だから現在キャスト募集において「土日だけ出勤したい」という希望者は、はっきり断っている。
もともと(少なくとも1990年ごろまでは)ソープにおいてキャストの出勤マップは店側が主導して作成してきた。「部屋数に規定された最大可能接客数の最大限追求」つまり「部屋の最大稼働」という観点から、キャストの出勤をA班・B班に分け、それぞれ2勤1休の15日ずつを基本として部屋数と同数のキャストを毎日出勤させ、部屋の稼働率において取りこぼしのないような営業をしていたのである。
いわゆる外のフリーがまだまだ見込める時代でもあり、こうした営業方法はそれなりに効果を上げていた。
言うなれば当時ソープは、まだまだ店のヘゲモニーのもとでキャストを働かすという時代であった。
名古屋にファッションヘルスやキャンパスパブというような、アルバイトや素人を売りにする店が増え、彼らが「自由出勤」を謳い始めたあたりから、それを真似したソープ店が主導するかたちで金津園の出勤マップがいつの間にかキャストが自由に決めていい“バラバラ出勤”“ときたま出勤”に変わっていった。名古屋のヘルスに学んだというよりは、キャスト管理におけるそうした新興風俗の譲歩・後退を模倣し、あろうことかそれをソープランドのキャスト管理のスタンダードにしていったのだ。
こうした店側の譲歩・後退は、それがいったんはじまるととどまるところを知らず、今日行き着くところまで行き着いた感さえある。かつて自由出勤と言われたようなあり方が、今では「ご自分でお決めください」というところまで後退している。
こうしたキャストの出勤管理における譲歩・後退は、2つの視点から考えてみる必要がある。
(1)ひとつは風俗就労全体の状況がそうした後退を店舗側に強制した面である。
現在、じつに30万人を超える女性が風俗勤務していると考えられている。ごく一部の女性が例外的に働いていたと思われる時代から、とりわけ80年代以降、新興風俗の増加とともにスナックでアルバイトする程度の気軽さで非常に多くの女性が風俗の世界に流れ込んできた。30万人という数字は、実際に就労している20代から30代前半の女性看護師の数とほぼ同数といえるほどの多さである。店舗数の多い東京に限っていえば15人にひとりの女性がダブルワークも含めて風俗勤務しているというデータさえある。
こうしたいわば「風俗勤務の大衆化」「風俗アルバイトの一般化」、空いた時間に勤務したいという女性が増加したという事情が、店舗主導の出勤マップ作成をそもそも困難にし、サブワーク・ダブルワークという事情にも規定されて“バラバラ出勤”“ときたま出勤”を常態化したという問題である。
(2)もうひとつは店舗側が自ら積極的に出勤ルールの緩和を選択した面である。
出勤日数と勤務時間の拘束を極限的に緩和し、「自分が働きたい日だけ」あるいは「自分が働きたい時間帯だけ」働いてくれればいいというあり方を、意識的にせよ無意識的にせよ自ら選び取ったという事情である。「働きたいときだけ働きたい」「丸一日ではなく限られた時間帯だけ働きたい」。そうしたキャストのあるがままの意識をどこまでも肯定し、あるいはそこに追随し、そうすることによってキャストの無自覚的な意識にどこまでも屈服し、指導性を放擲していく道を自ら選び取ったのである。
あまたある全国の風俗店の求人サイトを見渡してみれば、そうした文言が溢れていることに気づく。
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お約束が守れなくてもペナルティは一切ありません。
(吉原の高級店メイクアップ・オーキッドクラブ・マンダリンの求人ホームページ)
こうした売り文句は吉原の高級店に特別なものではない。現在では、こうした売り文句が金津園も含めてきわめて一般的であり、そればかりか、こうした売り文句以外の店を探すこと自体が難しい。実際にはわれわれを除いてほとんど一軒もないといってよい状態である。
こうしたスタンスをとる店舗には、求人のハードルを下げ勤務条件を緩和すれば多数の応募を見込めるという考え方がその根本にある。はっきり言ってしまえば、風俗勤務する女性一般はもともと堕落的な考え方をしており、楽して稼いで贅沢したいと考えている、だから条件が甘ければ寄ってくるものだという考え方がある。
あるいは自分のなかに、女性一般に対してサクセスのために努力を強制指導する主体的な力がない。だから際限なく女性側にすり寄っていく。利益誘導する。あまつさえ、人間のもっとも堕落的な意識に働きかけて「気を引く」というやり方になる。
客観的に強制されたにせよ、主体的に選択したにせよ、いずれにしても、今日そうした「バラバラ出勤・ときたま出勤の常態化」が、われわれにとって部屋数に規定された最大可能接客数の最大限追求を阻害する要因となっていることは間違いない。ここにおける根本的な変革、あるいはわれわれ自身の意識変革、意識的な取り組みと指導が決定的に必要になっているということだ。
これまでの指導内容との整合性を無視するわけにはいかないので、折衷案とならざるを得ないが、一般的な方針としてはこうなる。
a. だいたいのところでもいいから、すべてのキャストについて1ヶ月の出勤予定を出させる。だいたいのところでもよい。今月はどのくらい出勤する予定なのか。10日なのか、それとも3日だけなのか。またそれはいつごろか。・・それだけでもまず出させる。
b. そうすると、1ヶ月の出勤マップで濃いところと薄いところがはっきりするだろう。どこに出勤調整をかければよいか、どこで強制出勤を組めばよいかもある程度はっきりしてくるはずだ。かけるべきところには、強制出勤をかける。
c. あるいはまた、そもそもの在籍数の限界も見えてくる。在籍が少ないが故に、出したくても出せない事情があるのであれば、それは店舗サイドからの事務局への要請として表現すべきだ。それは、路線の現実的対応としての採用条件の緩和となる場合がある(もちろんならない場合もある)。
d. 遠方から赴任しいったん帰郷しているキャストに、次の出勤を積極的に働きかけよということである。遠方から赴任しているキャストの場合、ともすれば腰が重くなることがある。店からの要請をかけることによってこちらから動かすのである。
e. 総じて出勤マップ作成をキャスト任せにしない。キャストの自由な出勤のモザイク的調整ではなく、徹底した店側の意識的取り組みによって部屋数に規定された最大可能接客数の最大限追求を創りだせ、オープンラストの全部屋100パーセント稼働を可能とする出勤マップをつくれということである。
フロントの基本的任務として、フロントおよび男子全体の意識的取り組みを要請したい。