■はじめに
われわれが会社を形成し一定規模のソープ店を運営していくうえで、いちばん大切な課題は組織論に関わる問題である。日常的には集客・接客・サービスなどの営業に関わるさまざまなテーマがあり、そこをめぐって日々苦闘しているわけだが、その根底にあるのが、会社組織をどうつくっていくのかという組織論に関わる問題である。
たとえばわれわれが日々直面している「どのように営業を行うか」というテーマは、その営業を展開する主体をどのように措定し建設していくかという課題と切り離すことができない。つまり営業は「どのような営業組織を作るのか」あるいは「営業組織というものをどのように考えるのか」という課題と切り離して考えることはできないということである。その意味において、営業論とはすぐれて組織論そのものなのだといえる。
組織論は、言うまでもなくそれ自身きわめて多岐にわたる。組織そのものをどのように措定するかというところから始めて、それを具体的にどのように現場において実現していくか(具体的人格としての個人がどのようにそれを実現するか)というところまで、カバーしていく必要があるだろう。これまで、「2005年下半期のR-GROUP組織方針」や「R-GROUPの現段階」で当時の問題意識を断片的に述べてはきたが、今回、われわれの組織論におけるもっとも根本的で原則的な課題をあらためて整理しておきたいと思う。
■繰り返される誤り
「2005年方針」や「現段階」で述べた問題意識は、主として、それまでの指導部がなぜ総入れ替えになるような事態に立ち至ったのか?という点にあった。専務・常務と呼ばれた大幹部が店を去り、「社長」と呼ばれたリーダーも辞めざるを得なかったのはなぜか。あんなにも有能な人たちが辞めなければならなかった原因は何か? そのあり方にはなにか決定的に大切なものが欠落していたのではないのか? いちばん大切なことを忘れていたのではないのか? そこを抉り出し、徹底的に総括しなければならない、そしてそれを繰り返してはならない、そういう痛切な思いから立ち向かった課題でもあった。
結論を言えば、退店せざるを得なかった者たちは、実際いちばん大切なことを忘れていたのである。あるいは、もっとも重視すべきことを軽視していたのである。その誤りは、2002年から2005年にかけて集中的に現れ、数年かけて作り上げた組織がいったんは全面的に崩壊していく(第一期)。その後必死の取り組みを通じて再建したにもかかわらず、残念ながら2007年から2011年にかけて再び三度繰り返された。(第二期)
その後再建された現在の体制は、全体としては、まだ1年にもならない状況である。
繰り返される組織の崩壊。これはなにか偶然に起こったものでも特殊な出来事として起こったものでもなく、結局は根本的な組織原則の欠如がもたらしたきわめて典型的な事例なのだと考えるべきである。
したがって、今考えるべきことは、今一度組織論に立ち返り、われわれの組織論=組織原則をしっかりと打ちたてること、そしてすべてのスタッフが(とりわけフロント担当者が)それを我がものとして、会社共通の認識をつくりだしていくことである。そうした問題意識から、以下いくつかの点について提起したいと思う。
■事務局=フロント体制の現状
4店舗の総括責任者:丹羽 |
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ティファニー |
田邊 |
フロント歴半年 |
勤続1年4ヶ月 |
ルネッサンス |
堀内 |
フロント歴半年 |
勤続1年 |
クラブロイヤル |
白鳥 |
フロント歴1年 |
勤続1年9ヶ月 |
貴公子 |
高橋 |
フロント歴1年 |
勤続3年5ヶ月 |
昨年からフロントに入っていた人もいるが、4店舗のフロント体制が現在のかたちで実質スタートしたのは、本年2012年の初頭からであり、まだ半年あまりである。その意味においては、個々のフロントとしても、また4人の連携という点でも、まだまだスタートしたばかりであるといえる。
さて、先に述べたとおり、ここ数年(第二期)を振り返ると、スタッフとしては非常に優秀であったにもかかわらず、フロントに座ったとたんダメになっていった例が非常に多い。ざっと思い出すだけでも、
F(3年)、E(1年6ヶ月)、K(1年)、F(10ヶ月)、F(5ヶ月)、O(1年9ヶ月)、A(8ヶ月)、N(半年)
<※カッコ内はフロントを担当した期間>
残念ながら2年ともたなかった例がほとんどである。
自分から望んで辞めた例、辞めざるを得なくなって辞めた例、解雇された例など退店の理由はいろいろであるが、自分から望んで辞めた例をのぞけば、退店に至る原因はたいがい共通している。ということはすなわち、この共通した原因となっている問題こそ、われわれが乗り越えるべき組織的課題だということにもなる。
限りある人材がまっすぐに育つためにも、営業的な課題のみならず、組織的な課題について、今この時期においてはっきりさせておきたいと考える。
以下、(第一期)(第二期)を振り返り、退店に至る原因として挙げられる4つの偏向・誤りについて整理し、同時に乗り越えるべき課題として提起したい。
■退店に至る4つの偏向・誤り
【1】指導系列と序列の破壊
退店の原因でもっとも多いものは、この「指導系列と序列の破壊」である。つまり「指導の系列と序列」を下から破壊することで指導関係そのものを自分で解消してしまい、結果辞めざるを得ない状況になってしまう例である。
だいたいはこういう流れをとることが多い。
上司の指導を、最初のうちは素直に従っている。ところが、フロントに座って時間が経つにつれてだんだん我が出てくるようになってくる。「はい、わかりました!」と0.2秒で返事をしていたのが、「でも・・」と反論が多くなってくる。上司の言葉が素直に入っていかない。言うことが聞けない。言い訳が多くなる。あるいは自己主張が多くなってくる。「現場のことは自分のほうがよく分かっている」という意識が心の中を占めるようになる。逆に「あの人は現場がわかっていない」というようなことを言い始める。
上司=部下の関係が絶対的なものであったところから、「これは従えるが、これは従えない」という相対的なものに変質していく。たとえ従ったにしても面従腹背の気分が大きくなってくる。会議では一致しながら、フロントに帰るとまったく別のことをやりだす。上司の指導が行動の基軸ではなく、自分の私的な考え(我)が思考と行動の基軸になってくる。当然、指導=被指導の関係が正常に機能しなくなる。最後は上司との人間関係そのものの破綻を通して、指導関係が終了するというパターンである。
たいがい自覚あっての行動となる場合が多いが、もともとの我の強い性格や野心などの場合もある。ただ、根本的には「組織の原理」(一般に組織がどのような原理に基いて成り立っているか)についての無理解と、自分の能力に対する過大評価が原因であることがほとんどだ。
とくに、自分の限定的な経験を絶対化した「正義感」を根拠にして指導に反抗する場合は、本人に変な「信念」があるだけ、非常に始末が悪い。
あるいは、キャストの力量と顧客満足の対立において、路線貫徹の観点から顧客満足をとると決定した上級の意思に対して、キャストの気持ち一般を最優位に置こうとするキャスト絶対主義。その時その時の「女の子の気持ち」が彼にとっての「正義」である。
言うまでもないが、それらの「正義」に一分の理もないと言っているのではない。一分の理はある。部分的には真理である。しかし、その部分的真理を度外れに拡大して他の一切に優先する絶対的真理だと考えゴリ押ししてしまうところに誤謬が生じるのである。
【2】グループとしての共同性を無視し、店舗主義・個別主義的な立場から系列店と敵対する
これも非常に多い。事務局が「みんなで心をひとつにして・・」と事あるごとに言うのは、この店舗間の対立と敵対がもたらした組織的打撃、その痛みの記憶が今なお強烈に残るから・・ということもある。
傾向としては3つある。
1.ひとつは、部屋借りなどを契機とした店舗間の対立である。部屋借りのやり取りをめぐっては感情的に敵対心が生じることが多く、とくに部屋を貸す側に感情のいらだちが生じやすい。
「お客様へきちんと説明がなされていない」「部屋借りに来るキャストの教育ができていない」「時間通りに送ってこない」。部屋を貸すことで生じる仕事量の増加も、被害感に転化しやすい。
しかし、こうした感情の克服は、結局のところグループとしての共同性に自分自身を依拠させる以外にないものである。「部屋を貸してやっている」といった店舗主義的な感情が残っている限り、共同して何かを作り出すことはできない。「部屋を貸してやっている」のではない。限られた部屋数のなかで、4店舗が協同して最大稼働率を目指す闘いをやっているのである。「自店」のキャストによる部屋の稼働率が意識の中心軸ではなく、4店舗36部屋全体の稼働率のために頑張る。そうした意識が絶対に必要だ。
「自店」のキャストに対する態度も、「他店」のキャストに対する態度も同じでなければならない。「自店」のキャストに強いていないことを「他店」のキャストに強いることも根本的な間違いだ。男子スタッフについても同様である。
グループとしての共同性を何よりも大切にする。共同的立場に立ちきる。ここがいちばん肝心である。
2.連絡・通達の不足のなかで店舗間に残る方針や習慣の違いを固定化し、それを店舗カラーとして位置づける傾向も常に生じやすい誤りであり、断固として排斥されなければならない。「前任者からそう言われた」「前からそうしてきた」「他の店とはやり方が違う」。いろんな言い訳があるが、どのような言い方をしようと、要するに仕事のいっさいを上司=事務局の指導と決裁、許可と承認のもとで行なっていくという意識の希薄さ、グループとしての統一性を大切にするという意識の希薄さの表現にほかならないのであって、ここは根本的に考え直してもらう必要がある。他店に対する店舗主義であるばかりか、事務局に対する店舗主義(個店主義)であって、100パーセントありえない話である。
3.さらに、感情的にせよ方針上の違いにせよ店舗間の対立が人間関係の悪化にまで発展し、その関係改善のために努力するのではなく、固定化させてしまう傾向である。ここまでくると最悪であり、フロント担当者としての適性に著しく欠くと判断せざるを得ない。
店舗主義・個別主義の弊害は、4店舗の団結を破壊し、ひいてはグループ崩壊を引き起こしかねないほど大きなものであり、実際これまでの歴史を振り返っても、店舗間の対立=人間関係の悪化がグループの団結を著しく阻害してきた事実がある。はっきり言って店舗主義・個別主義に陥っている傾向そのものが組織建設という観点からいえば犯罪的だとさえいえる。店舗間で感情の対立が生じたとき、自身の感情には理由があって正当なものだと考えるのが人間のサガであることは認めるが、会社はそのような敵対的な感情が芽生えること自体を問題にする。敵対的な感情が芽生えるということは、その感情を生み出す店舗主義的=個別主義的な偏向・思想的根拠があるからだと判断する。フロント担当者には、そのような感情を正当化するのではなく、グループ的共同性の立場から真に同志的で仲間意識にあふれた関係構築のために全力で努力することこそが切に求められているのである。また、そこを理解し実践できることがフロント担当者の最低条件でもある。(人と揉める傾向のある者をフロント担当者にできない理由は、まさにここにある。)
なお、経験的に言って、フロント担当者が「うちは・・」「うちの店は・・」と言い始めたとき、そこには間違いなく店舗主義の萌芽が見え隠れしていることを指摘しておく。フロント担当者の主語は徹頭徹尾「R-GROUP」「グループ」「われわれ」「私たち」でなくてはならない。
【3】会計処理において不正があった
不正など問題外であるが、退店に至る原因として過去相当数あったことも事実である。会計は、売上・本数・経費にかぎらずあらゆる分野についてつねに監査される。不正は絶対に露見する。断じてあってはならない。
むしろフロント担当者は、正確で適正な会計が行われていることを、日常的に上司に確認させていかなくてはならない。計算ミスやつり銭の過不足などは、1円単位でひとつ残らず報告されるべきである。
いずれにせよ、不正経理が退店にいたる原因となることは、他のどのような理由と比べても残念至極なことであり、絶対に避けなければならない。
【4】店舗スタッフおよびキャストからの信頼がなくなった
現在フロントに座っている諸君がフロント担当者に抜擢された際、口を酸っぱくして話したことは、おおよそ次のことであった。
「諸君らに限ってそんなことはないと確信するが、通例、フロントに座るとなにか自分がえらくなったような気持ちになってふんぞり返るようになる人が多い。人が変わる。王様になる。スタッフに偉そうにモノを言い、威張るようになる。肩書きを持つと、そういう傾向がさらに強くなる。しかし、そうした意識・態度は、かならず自らの破滅を招く。自分はそんなことはない、自分はそんなふうにはならないと思うかも知れないが、そういう傾向は誰にでもある。心して謙虚にいけ。」
そういう内容のことを話した。
実際、退店に至る理由のうちこうした「王様化」によってスタッフ・キャストから総スカンを食らって、やっていけなくなった例が、やはり1/4くらいある。あるいは、その「王様化」がもたらす組織的影響が看過できないほど大きなものになって、結局フロントをはずれてもらわざるを得なくなった例もある。現在のフロント担当者諸君にあって、そんなことは100パーセントないと確信しているが、スタッフ・キャストを力強く指導する主体の根底には、彼らへの限りない愛情と感謝が横たわっていなければならないことを、繰り返し確認しておきたい。
以上、これまでの経験上、退店の原因となってきた4つの事象について述べた。
フロント担当者となることは、働く主体にとってチャンスであると同時に、いっさいのごまかしなく指導部としての主体が問われ、飛躍が求められる苛烈な過程でもある。そこにおいて上記4点は、誰もがもっとも陥りやすい誤謬であり、陥穽である。会社の苦い教訓として確認しておきたい。
さて、以上4つの課題を総括して、それに対応した4つの方針を出す。
以下の方針は、フロント担当者にとって最大にして最高の、そして根本的にして根底的な、これよりほかにないといってもいいくらいの原則課題であり、いわばわれわれの「憲法四か条」である。
絶対貫徹以外にはない。心して厳守してもらいたい。
R-GROUP「守るべき四つの課題」
【第一条】指導系列と序列を大切にする(上司との関係)
日常的な店舗運営のあらゆる課題を上司の指示と決裁のもとで組織的に行う。また、現場で生起しているあらゆる点について、すべて上司に報告する。【報告義務】
(1)現場で起こっていることについて上司が知らないことがあってはならない。R-GROUPはすべての部署において風通しのよい組織であることを求める。良い報告であれ悪い報告であれ、すべて報告すること。どんなに悪い報告であってもよい。もっとも悪いことは報告すべきことを意図的に隠すことである。隠し事・秘密主義は信用を失墜させ、組織を崩壊に導く最悪の偏向である。
(2)上司とのやり取りにおいては指導を素直な気持ちで受け入れ、その主体化のために全身全霊をかける姿勢が何よりも大切である。能力は大切な要素であるが、R-GROUPは能力主義の会社ではない。また、そのような立場に立ったこともない。われわれは、器用な有能さ・能弁さよりも素直な態度・人格を重視する。「素直さ」以上の才能はない。
(3)また下部は上級の指示に従う際、その「忠誠」(素直な気持ちで全面的に受け入れるという姿勢)を100パーセント誤解なきよう表現することが大切である。(われわれは礼節に満ちた爽やかな返事・挨拶・行儀を重視する。)
【第二条】個別主義・店舗主義を排し、グループとしての共同性を大切にする(系列店との関係)
個別主義・店舗主義は、グループとしての共同性を破壊し、店舗間の敵対と会社組織全体を崩壊に導く最大の誤謬であり、偏向である。すべてのフロント担当者は4店舗共同の利害を代表する立場にたちきって思考し実践することが求められる。
(1)フロント担当者は、お互いをかけがえのない仲間として敬愛し、尊重し合え。
(2)業務上の会話はビジネス敬語を使用し丁重に行う。
(3)フロント担当者は相互に綿密な連絡を取り合い、積極的に会議を主催し、信頼関係を醸成せよ。
【第三条】100パーセント透明な会計を心がける(カネをめぐる問題)
会計に対する厳密で誠実な姿勢は、フロント担当者において欠くべからざる第一級の資質である。
(1)不透明な会計は100パーセント排除する。会計日報は、入金・出金のすべてにおいて事務方が内容を正確に把握できるよう記載する。(出金は必ず明細書を添付すること)
(2)売上は公金である。上司の許可・承認なしに、自分の考え一つで使えるカネはないと知れ。
(3)経費に鈍感な姿勢は許されない。つねに経営的感覚を磨くことにつとめ、経費削減に努力する。経費削減の知恵をグループで共有できるよう提案を怠らない。
【第四条】スタッフを最大限尊重する(働く仲間との関係)
キャストおよび男子スタッフは、自分を支えてくれるかけがえのない仲間である。最大限の愛情と感謝をもって接しなければならない。
(1)フロント担当者は、R-GROUPのチームリーダーのひとりとして男女スタッフを維持し、粘り強く大切に育てていく責務を負う。
(2)スタッフ教育の要諦は、成功体験を積み重ねさせることである。
(3)指導は立場と責任において行うのであって、肩書きで行うのではない。ともに仕事を担う仲間として、最大限の尊重と感謝・愛情を表現することが大切である。